ディズニーシーの思い出
ディズニーシーに入るたび思い出す景色は夜だ。
仕事場が舞浜に立ち寄りやすい場所だったとき、年パスを持っていたこともあって度々訪れていた。
仕事は時間のかかることばっかりで、立ち寄る日もたどり着く時間はだいたい閉園1時間前くらい。
へとへとの気持ちを引きずって、ほとんど意地になって舞浜駅にたどりつくと、焦る気持ちに早足でイクスピアリの横を通り、入園ゲートでキャストの方に迎え入れてもらって、そこでもうちょっとグッときている。
エントランスへ流れて行く人波に逆らいながらハーバーへ出る。
ジーニーの楽しそうな声が響く。ファンタズミックだ!
ああどうしようかな、見ていこうかな、でもこのあいだにハーバー周辺から抜け出そうかな、今日はどこにいたいかな、お腹も減ったな。
見惚れている人たちによって作られた人垣を眺めながら、帰ろうとしていたけれど足を止める人たちの横顔が視界に入りながら。
その、疲れていて、満足そうな顔。
心臓の根っこが引き絞られて目の奥に熱いものが込み上げる。
自分を憐れむ気持ちもたぶんありつつ、だからこそ良かったとほっとする気持ちがあった。
私が必死にしがみついているあいだにも、今日も幸せな一日がここに流れていた。
良かった。大丈夫だ。
結局だいたいこういうときは何をしようか決めきれず、せかせかと目的もなく一周して、明日の起床のことを考えて慌てて帰るようなことが多かった。
だから何かしたとかそういう記憶はあまりない。
ただ入園してすぐの、あの良かった、大丈夫だ、という気持ちをファンタズミックと一緒にすごく覚えている。
シーに入園するたび、それが朝いちばんであっても、陽の高いお昼であっても、あの夜の匂いを思い出す。