静岡県立美術館にて

ちょっと静岡に出ることになったので、一泊することにした。

翌日の三時ごろに帰る切符だけとって他に何も決められたことはなく、気づいたらホテルのベッドでぼんやり動画を見ていた。
これは……行くあてもなく迷うに迷うも焦るだけで何もせず駅の中をうろついて終わる。
自分の興味本位だけで動けるとなると何か人がいるときは提案を躊躇うところにも行けてしまうしそういうところになどと考えだすときりがない。

富士山、臨むか。

それと、素敵げなおしゃれカフェ(gemminy's)の朝食を見つけたのでその開店時間と地図だけチェックして寝た。

 

翌日、私の前にいたのはロダンだった。

ぼんやりしたまま適当にバスに乗り込んだら県立美術館行きなのだった。
秋の空は高くまだ夏の日差しがまだ残る暖かな良い天気だった。
富士山。
もったいないことをした気がすると調べなおしてみるも、移動時間が、なかなか。
企画展示は「絶景を描く -江戸時代の風景表現-」だった。ほかの人の目を通した富士山なら見られる。
そういうこともある。

企画展示は面白かった!
一番面白かったのは…メモしたはずなのになくしてしまった。誰の作かも題も忘れてしまったのだが、解説時点で「いろんな時節に描き残しているが明確な違いがない」みたいなことを言われていて(この「」は私の記憶だよりのものなので実際はぜんぜん違う意図のことが書いてあったかもしれない)、
そう言われるとおり違いが伝わらない絵だった。いや違う。ちゃんと違うんだよ。でも一緒なんだよな。
猫飼いの人の写真フォルダ見たみたいで面白かった。微妙に違う似た角度の同じ猫がずらっと並んでいる感じ。
撮っちゃうんだよな。消せないんだよな。違うんだよな。わかるわかる、という気持ちになった。私は猫飼いではないけれども…
印象的だったのは原在正作のもので、複数飾ってあったがいずれも目を引いた。横長のポストカードとかあったら欲しかった。これのために図録を買った。

で、ロダンである。
常設展示にロダンがあって、それらが集められた別館がある。
本館と別館を繋ぐ廊下にはロダン以外の彫刻作品が飾られていた。人がいなくて、ずらっと並んだ彫刻作品の間を行くのは多少こわかった。。なんだろう、圧迫感なんだろうか。
ジャコメッティだけすぐわかった。以前展示を見たからかもしれないし、どうやっても特徴的なんだろうなとも思う。

ともあれロダンである。
ロダンの作品は見たという記憶がない。見たことあるかもしれないが、見たな〜!という記憶がない。
圧倒だった。
人間の肉ってなんか、もしかして、めちゃくちゃうつくしいかもと思えた。
人の動きに伴う筋肉と脂肪がつくる皺がしなやかな線を形を作っている。すげ〜実在感と、人間、うつくしいかも、という迫力を携えていた。
あとなんか習作とかも飾ってあったけどほんとにデッサンぽいというか、人の脂肪だったところから急に石らしさを覗かせてきたり、そもそも人のラインじたいがゆるりとしていてデッサンだ!?となってびっくりした。うまくいえない。
ばしゃばしゃ撮った。館も凝っているのでなんかどう撮ってもさっくり絵になる。

朝食をとったおしゃれカフェで持ち帰りにしたサンドイッチを外のベンチで食べた。
隣接する芝生公園の歩道沿いにはいい感じのベンチがあって、彫刻作品もあちこちに飾られている。
サンドイッチはすごくおいしかった。途中から虫と鳥との争奪戦になった。勝った。

 

結局微妙に時間を持て余して駅周辺をあてどなくうろうろしたり、駿河屋に長居してみたり、それでも時間がつぶしきれずに駿府城公園に行ったら今度は危うくなって必死に駅まで戻ったりした。

良い一日だった。

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