なつばて

きえてなくなりそうな
気さえしない
だのにだれとも触れ合わない
まいにち通う
このきゅうくつな人のあふれる大きな路地でさえ
だれとも
知らない世界みたいになにひとつ
想像もつかない だれとも

触れ合わないひととなりを
熱でもって知った気になって
痴漢と同じか それくらい
きゅうくつな満員電車で
ひととぶつかるのと おなじ

どこへ消えよう
どこへ行こうか
きたない部屋で考える
だけ

"きらいだよ"

放たれた一言は放物線を描いて
ぼくにつきささる
たしかに触れた 一瞬の

ぱんぱんの水風船どうしが
ぶつかりあって 表面についた 水滴がはじけた
ような

感触さえ
なにもないのに
空気は遠く隔てている
のに
振り向くこともないきみの きみの こえが
触れ合った 確かだった

あの声が 遠く鳴って生かされる
今日も おなじ
 
 
(2010/07/24 (Sat))
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