そして大鎌が振り下ろされる

つまり、私は私でしかないが故に、私は私にすらなれない。
遮断機が鳴っている。手をふった。夢の最中、あなたは我に帰る。そしてどこにも生きていなかったことを思い知る。思い知ればいい。笑わないあなたに微笑む人がいない。私はひたすら、ほくそえんでいる。手を叩く。破裂音はしかし、途切れている、断続的に。
私がたった一人、この、だれかとなにかとを分けうる境において、あるいは指標となるべくして生まれたものの上を、どうにかこうにか駆け込んでいると、ただひたすらまっすぐとした視線がじつと見ていると感じる。見られている。見ろ。私は、見られるべくして見られている。ほら、見てみろ。
いきりたった脚立の上に腰を下ろす。褒め称える言葉を知らないので、金魚の口を真似する。それがあなた。眼下に広がる光景がいくらとも身動きの取れないものであったにせよ、口も手も足もぶらぶらとくっついている。それで、よかったのではないか、という音。
思い知ればいい。

(2006/09/10)
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