勿忘草
あなたは今日一日 忘れてしまった呼吸を
犬に分け与えて微笑んでいる
フォアゲット-ミー-ノット
満月は太陽の視線を独り占めしてほくそえむ
路地裏に去った私のかかとはとまらない
急なターンでゴミ箱を覗く
忘れて-私を-やめて
幼い頃のアリんこの行列は今になって胸をうちます
忘れて欲しいか、忘れたかったのか
犬は大仰にありに頭を垂れる
(それでも距離は縮まらない、目線は違う。)
アリは犬の毛を見る爪を見る
犬は自分の鼻を見つめている
ゴミ箱にあるのは私の靴だ
右足がぴかぴか 貴方のほうを向いている
あなたがしゃがむと私の足と足の向こうに
海があって 右足にはあなたが映る
私はどうしても貴方のつむじごし、貴方の映らない左足が気になる
あの日、つぶされたアリんこと一緒にかかとは行く
風はあなたの犬が吼えたぶんだけ吹いてゆきます